2024.12.03
インボイス制度が始まり1年が経過しました。
【2割特例】令和4年分の課税売上高1,000万円超の場合は適用不可
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者となった事業者は、売上げに係る消費税額の2割を納付すればよい2割特例を適用できます。2割特例の適用を受ける場合、仕入税額控除のためにインボイスの保存は必要ありませんが、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えている場合など、インボイス発行事業者の登録と関係なく課税事業者となる場合は適用できません。
そのため、個人事業者が令和6年分の消費税の申告で2割特例を適用するには、令和4年分の課税売上高が1,000万円以下であることが必要です。令和4年分の課税売上高が1,000万円を超えている場合、令和6年分の消費税は簡易課税又は原則課税により申告する必要があります。 なお、2割特例を適用するには、事前の届出は必要なく、消費税の確定申告書に適用の旨を記載するだけで適用できます。
【簡易課税】R6年12月末までの届出で6年分に適用可能なケースも
個人事業者の令和4年分の課税売上高が1,000万円を超えていて、令和6年分の消費税の申告で2割特例を適用できない場合であっても、令和4年分の課税売上高が5,000万円以下である場合は簡易課税を適用できます。 簡易課税の適用を受ける場合も2割特例と同様に、仕入税額控除のためにインボイスの保存は必要ありませんが、原則、その適用を受ける課税期間の開始日の前日までに税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。
しかし、令和5年分の消費税の申告で2割特例の適用を受けた事業者については、令和6年12月31日までに届出をすることで、令和6年分の消費税の申告で簡易課税の適用を受けることができます。令和5年分の申告で2割特例の適用を受けた事業者であっても、届出が令和7年1月1日以降になると、令和6年分では簡易課税の適用を受けることができず、インボイスの保存が必要となる原則課税で消費税の申告をする必要があります。
令和6年12月17日までの登録取消届出書提出で令和7年分は免税事業者も可
令和5年10月1日にインボイス発行事業者の登録を受けても、その後に登録の取消しをしたい事業者様もいることでしょう。個人事業者が令和7年からインボイス発行事業者の登録を失効させるには、令和6年12月17日までに、所轄税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」の提出を終えることが必要です。令和6年12月18日以降に届出をした場合、令和7年では登録は失効されずインボイス発行事業者のままとなるため、令和7年中はインボイスの交付義務が生じ、課税事業者として消費税の申告納付が必要となります。
また、インボイス発行事業者の登録を取り消しても、原則、登録日から2年間は免税事業者になることができない、いわゆる「2年縛り」が適用されます。しかし、令和5年10月1日を含む課税期間から登録している場合は、登録を取り消した翌課税期間からは、免税事業者の要件を満たしていれば、自動的に免税事業者になることができます。そのため、個人事業者が令和5年中にインボイス登録をして、令和6年12月17日までに登録取消の届出をした場合は、令和7年よりインボイス発行事業者でなくなるため、基準期間である令和5年の課税売上高が1,000万円以下であれば、令和7年は免税事業者となり、令和7年分の消費税の申告は不要となります。
令和6年以後にインボイス登録している場合は2年縛りが適用されるため、基準期間の課税売上高にかかわらず、少なくとも2年間は免税事業者になることができません。
令和6年分から12か月分の消費税を申告納付
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス登録をして課税事業者となり、令和5年に初めて消費税の申告納付を行った事業者も多いことと思います。
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2024.11.27
皆様はマイナンバーカードをお持ちでしょうか。
しかし、マイナンバーカードを持ち歩くと紛失等が心配という方もいるでしょう。
スマホ用電子証明書とは、令和5年5月から開始したスマートフォン向けの公的個人認証サービスです。マイナンバーカードのICチップに格納されている署名用電子証明書を使ってスマホ用電子証明書の機能を搭載することで、スマホだけでマイナンバーカード関連の各種サービスを利用することができます。
スマホ用電子証明書を搭載するには、利用申請が必要です。対象端末のマイナポータルアプリから、マイナンバーカード用署名用電子証明書のパスワード(マイナンバーカードを市区町村の窓口で受け取った際に設定した6文字から16文字の半角英数字)を入力し、マイナンバーカードの読取り等を行って申し込みます。
搭載までの詳しい流れは、マイナポータルのホームページで確認することができます。
現在、スマホ用電子証明書が利用可能なサービスはマイナンバーカードを使用する際と同様に、住民票の写しをはじめとする市区町村の各種証明書のコンビニ交付サービス、銀行・証券口座開設等の各種民間オンラインサービスなどがあります。
税務の場面では、年末調整において国税庁が提供する年調ソフトで利用でき、令和7年1月からは、e-Taxの確定申告の場面でも利用が始まります。今後は健康保険証としての利用もスタートする予定となっています。
搭載できるスマホは、令和6年11月時点でAndroidのうち約350端末ですが、今後は、iPhoneも対象に加わる予定とのことです。
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マイナンバーカードには賛否ありますが、今後はその役割が大きくなっていきます。
2024.11.20
年末年始が近づき、忘年会や懇親会などの会食に参加される方も多いことでしょう。
懇親会など飲食のための支出については、令和6年4月より交際費等の範囲から除外する飲食費の金額基準が引き上げられ、1万円以下であれば損金に算入することができるようになりました。
飲食費とは飲食等に要する費用の総額が前提
法人税の交際費課税における交際費等とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」とされていますが、一定の飲食費は交際費等に除外されます。
令和6年4月から、交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準については、1人当たり1万円以下に引き上げられました。
例えば、業界団体の懇親会に参加するにあたり、会員となる各法人が会費1万円を支払っていたとします。
飲食費総額の通知がない場合は支出した金額で判定
一方、業界団体等の懇親会が催される場合、会員には会費の提示のみが行われることも多いと思います。
懇親会に出席する度に、会員が飲食費総額を照会することは実務上難しいことから、飲食費総額の通知がなく、かつ、その飲食等に要する1人当たりの費用の金額がおおむね1万円程度にとどまると想定される場合には、その支出した金額で判定しても問題ありません。
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物価高が進んでいる昨今、飲食代も高騰しております。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
2024.11.13
不運にも社用車を運転中に事故に遭い、破損した社用車を修理に出すこととなった場合、会社と修理業者、保険業者の3者間で修理代や保険金の支払いのやりとりが必要になります。
会社に保険金が入金される場合の仕入税額控除とインボイス対応
自動車等の保険金等は、事故の発生に伴い受けるため資産の譲渡等の対価には該当せず消費税の課税対象となりません。
例えば、社用車の事故に対する保険金55万円の支払いを受け、保険金を原資に社用車を55万円で修理したケースでは、修理代55万円に係る消費税5万円が仕入税額控除の対象となります。
保険金入金時に不課税の保険金収入を計上し、修理代の支払時に修繕費の課税仕入れを計上することとなります。
大手保険会社によれば「保険会社から会社に対して、保険金の支払案内通知を送付します。修理代に係るインボイスは修理業者から会社に交付されることが一般的と考えます」とのことです。つまり、保険会社から会社に届く通知はインボイスではなく、修理業者から修理代に係るインボイスを受領することで、仕入税額控除を適用できます。
会社に保険金が入金されず直接修理業者に支払いがある場合に注意
契約によっては、保険金が会社に入金されず、保険会社から修理業者に修理代として保険金の全額が直接支払われるケースがあります。基本的には、会社が保険金を受領し修理代を支払う際と実態は変わらないため、この場合も修理代は会社の仕入税額控除の対象になります。会社は保険金の入金、及び修理代の支払いがないため、保険金収入及び課税仕入れの計上漏れが生じないようご注意ください。
例えば、社用車の事故で保険金55万円が修理代として保険会社から直接修理業者に支払われる場合、修理代55万円に係る消費税5万円が会社の仕入税額控除の対象となります。修繕費(課税仕入れ)と保険金収入(不課税売上げ)を計上します。
このケースについて、大手保険会社は「保険会社から会社に加え、修理業者に対しても保険金の支払案内通知を送付します。修理代に係るインボイスは修理業者から会社に交付されることが一般的と考えます」とのことです。一般的には、保険会社から会社に届く同通知は、修理代に係るインボイスではないため、会社は修理業者から修理代に係るインボイスを受領することになります。
一部会社負担の免責額がある場合も修理代金が仕入税額控除の対象
契約によっては、会社が一部修理代を負担する免責金額が設定されており、免責金額を除いた金額が保険会社から修理業者に支払われることがあります。基本的には、会社は負担する免責金額にかかわらず、修理代の金額が仕入税額控除の対象になります。
例えば、社用車の事故に係る修理代55万円のうち会社負担の免責金額が10万円である場合、修理業者に会社が10万円を支払い、残額の45万円が保険会社から修理業者に直接支払われるケースでは、保険金収入は45万円だが修理代55万円に係る消費税5万円が仕入税額控除の対象となります。
大手保険会社によれば、この場合は「保険会社から保険金45万円の保険金支払案内通知を会社と修理業者に送付します。修理代に係るインボイスは修理業者から会社に交付されることが一般的と考えます」とのことです。一般的には、保険会社から会社に届く同通知は、修理代に係るインボイスではなく、修理業者から修理代に係るインボイスを受領することになります。
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社用車が破損するような事故にはできれば遭いたくないものです。
2024.11.06
皆様はみなし解散の制度について御存知でしょうか?
会社法上、株式会社の取締役の任期は原則2年(最長10年)とされ、一般社団法人も同様、役員の交替等があれば任期ごとに変更登記を行う義務があります。
通知を受けた対象法人は事業を廃止していない場合、令和6年12月10日までに管轄の登記所に事業を廃止していない旨の届出をする必要があります。
法務省によると、令和5年度のみなし解散は株式会社が27,887社で、一般社団法人等が1,787社とのことです。
みなし解散の登記が行われた場合は令和6年12月11日が「解散の日」となることから、法人はその事業年度開始の日から解散の日までを一事業年度(解散事業年度)とし、当該事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告書を提出しなければなりません。
令和7年2月11日が祝日のため、翌日の2月12日が申告期限となります。
法務省によるみなし解散の登記が行われた場合、税務署等は令和6年12月末から令和7年1月上旬を目安に、みなし解散に伴う申告手続のお知らせを対象法人に送付するとのことです。みなし解散になった上に税務申告を期限内に行わなかった場合、青色申告の取消しが生じる可能性もあるため、万が一みなし解散になった場合は顧問税理士に連絡するなどし、必ず期限内に申告を行うようにしてください。
今回の内容は以上です。
2024.10.30
時が経つのは早いもので、今年も残すところあと2か月と少しとなりました。年末になりますとふるさと納税をされる方が増加します。
しかし、10月21日に改訂された総務省の「個人住民税の定額減税に係るQ&A集(第3版)」で、7年度分においても影響しないことが明確化されたため、訂正させていただきたいと思います。
個人住民税における定額減税は、原則として令和6年度分の税額から減税額(本人:1万円、控除対象配偶者又は扶養親族:1人につき1万円の合計額)が控除されますが、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者(本人の合計所得金額が1,000万円超の同一生計配偶者)に係る減税額1万円は、令和7年度分の税額から控除されます。
ふるさと納税は、寄附した年の翌年度の個人住民税から一定額の控除を受けることができます。
定額減税の適用がある場合、控除限度額の計算方法については、令和6年度分では「定額減税前の住民税額」を基準とする特例が設けられており、定額減税がふるさと納税の控除限度額に影響することはありません。
しかし、上記の特例はあくまで確認規定にすぎず、この特例がなくても、控除上限額のベースとなる税額は地方税法上、定額減税適用前の金額となっているため、令和7年度分においても「定額減税 前 の住民税額」になるとのことです。
そのため、本人の合計所得金額が1,000万円超で同一生計配偶者がいる給与所得者が、令和6年中にふるさと納税の寄附を行う場合も、定額減税がふるさと納税に影響を及ぼすことはありません。
今回の内容は以上です。
2024.10.23
インボイス制度が開始したことにより、消費税の仕入税額控除にはインボイスの保存が必要となりました。
しかし、場合によっては自社が負担するべき費用を第三者が一旦立替払いをし、後からその第三者に支払いをするということがあります。
そこで、主催者にインボイスではなく立替金精算書を発行してもらい受け取る方法があります。
ホテル等での懇親会等で、主催者が会場運営側にあらかじめ支払を済ませておいた場合は通常、会場運営側から交付されるインボイスには「主催者名」が記載されます。
「各会員名」は記載されないため、各会員は仕入税額控除の適用に当たり、原則、インボイスの写しと主催者の作成・交付する立替金精算書が必要となります。インボイスの写しが大量で交付困難な場合は、主催者がインボイスを保存し、各会員は主催者交付の立替金精算書の保存をもって、仕入税額控除を適用できます。
こうした立替金精算書には、「課税仕入れに係る支払対価の額」、「支払対価の額に係る適用税率」、「インボイスの登録番号」等を記載するのが一般的でしょう。
ただ、その記載事項が多ければ、直ちに仕入税額控除が可能なものかどうかの判別に時間を要するため、その記載ぶりを明確にしたいという考えがあるようです。
例えば、記載事項として、「課税仕入れに係る支払対価の額」、「支払対価の額に係る適用税率」は残しつつも、「インボイスの登録番号」に代わり、「本精算書をもって仕入税額控除を適用できます」等の一文を記載し、課税仕入れの相手方(会場運営側)がインボイス登録事業者であること(=仕入税額控除適用可能の旨)を示すのも方法の一つです。
立替金精算書の記載事項をもって、その立替金が仕入税額控除可能であることを明らかにする必要があるため、追加する一文は相手に誤解させない記載にすることが重要です。
今回の内容は以上です。
インボイス制度開始から1年が経過しましたが、いまだに特殊な場合の対応については浸透しきっていないように感じます。
2022.11.16
会社の経費を従業員の方が立替払いをしているという会社様は多いかと思います。
消費税のインボイス制度において、従業員が経費を立替払した際に受領した領収書等(インボイス)の宛名が従業員の氏名になっている場合、会社が仕入税額控除を受けるには、インボイスの他に、会社名等が記載された立替金精算書の保存が必要になります。
一方、従業員の経費の立替払で宛名に会社名が記載されたインボイスや宛名不要の簡易インボイスを受領した場合には、仕入税額控除を受けるに当たり、立替金精算書を作成・保存する必要はありません。
インボイス制度では、インボイスの交付を受ける事業者名や発行事業者の登録番号等が記載されたインボイス又は宛名不要の簡易インボイスを保存等することで、仕入税額控除を適用できます。
従業員が経費を立替払した場合、通常レシートや領収書等を受領します。
不特定多数の者に販売等を行う小売店等のレシートは、宛名不要の簡易インボイスとして、会社はそのレシートの保存で仕入税額控除が受けられます。
従業員が領収書等を受け取る場合、宛名を会社名にしてもらうことが通常で、インボイスとしての他の記載事項を満たしていれば、会社は仕入税額控除が可能です。
あくまで、仕入税額控除の観点で経費精算に係る立替金精算書が必要な場合とは、領収書等の宛名が会社名ではないケースです。
例えば、従業員が誤って自身の氏名で領収書等を受領した、従業員が自身のIDでインターネット通販を利用した際に領収書等に氏名が入っていた場合等が考えられます。
宛名が従業員の氏名の領収書等では、会社が支払った費用かわからないため、会社名等が記載された立替金精算書によって、支払者が会社であることを示すことになります。
そもそも宛名の記載が不要の簡易インボイスの場合は、支払者が会社であることを示す立替金精算書は不要です。
今回の内容は以上です。
領収書の宛名がそもそも会社名になっていればいい問題ですが、たとえ個人宛になっている領収書であっても、立替払いされた会社の経費であれば消費税の控除に使えるということを覚えておいていただければと思います。